2018年6月15日
(第8回執行委員会)
連合大阪 会長 山﨑 弦一
働き方改革関連法案は、そもそも8本の法案が束ねられたもので、玉石混交の法案を束ね法案にして、丁寧な議論を回避するという安倍政権の常套手段ではないかと思う。今回も、罰則付きの時間外労働上限規制や同一労働同一賃金など評価されるものを看板にしながら、その裏側では、長時間労働を助長する裁量労働制の対象職種拡大や高度プロフェッショナル制度が含まれており、極めて遺憾である。裁量労働制の対象職種の拡大は、厚労省の調査結果に誤りがあり削除されたのはご承知のとおりだ。もともと裁量労働制は、約30年前に一部の研究職などを対象に導入された。企業は、経済合理性を基本に動く組織なので、この制度が、本当にいい制度であれば、この30年の間にもっと広がっていたはずだ。そうなっていないこと自体が、この制度を、むやみに導入することはできないという証でもある。一方で、定額で残業やらせ放題という側面に気がついたブラック企業が悪用するということが目に余るようになってきている。もし導入されれば長時間労働がさらに助長されることになり、削除されたのは当然のことである。
高度プロフェッショナル制度は、スーパー裁量労働制とも言えるもので、深夜残業も休日出勤も関係なし。残業代ゼロで残業やらせ放題ともいうべき制度であり、極めて危険な制度だ。この制度の下では、万が一、過労死や過労自死の問題が起こっても、使用者責任を問えない、すべて自己責任ということになり、経営者側にとって極めて都合の良い制度になっている。また、安倍さんは「過労死を考える家族の会」の面会要求に一切応えていない。都合のいい話は聞くが、耳の痛い話は聞かないという極めて遺憾と言わざるをえない。加えて、1075万円以上という年収要件があることから、多くの皆さんが自分には関係ないと思っているが、いったん導入されれば、年収要件をどんどん引き下げていくことは目に見えている。現に、前の厚労大臣は「小さく生んで大きく育てる」という発言をしているし、もともとホワイトカラーエグゼンプション制度として議論されたときには年収400万円と言っていたもので、どんどん悪い方に規制を緩和されることは目に見えている。それは、これまでの歴史を見れば明らかで、労働者派遣法は1986年に施行以降、その対象職種がどんどん拡大され、今や、非正規で働く人が4割にもなっている。今回提起された裁量労働制の職種拡大も、まさにそうした事例の一つである。
そうしたことからも、今回、この法案を通してしまうことは、将来に大きな禍根を残すことになる。残された時間は少ないが、法案の採決を前に、働く仲間の皆さんに、高プロ制度の問題点について、しっかり訴えをしていくので、みなさんのご協力をよろしくお願いしたい。