pagetop

2018年度 大阪市立大学・連合大阪寄付講座

<第11回>
ケーススタディ④

AI、IoTの進展と働くことの将来

講義のねらい

「働くこととは」、「労働組合、労働運動とは」、「労働者の権利とは」、「働くことをめぐる諸課題」等などについて考え、理解するとともに、そうした上で働き、社会活動を行っていく人材を育成することを目的とする。

講義内容要約

<第11回>ケーススタディ④ AI、IoTの進展と働くことの将来
日時 2018年12月17日(月)13:00〜14:30
場所 大阪市立大学
講師 山﨑 憲(JILPT【独立行政法人労働政策研究・研修機構】主任調査員)
趣旨 AI、IoTの進展が「多くの雇用を失わせる」とする悲観的なシュミレーションがある一方、「人間の能力の拡張に寄与する」との見方もある。AI、IoTは、これからの労働にどのような影響を与えるのか。豊富な海外調査の事例紹介も含め、ともに考える。
テーマ AI、IoTの進展と働くことの将来
内容

1.働くことを問いなおす

2.日本政府の考えるシナリオ

  • (1)AIを活用しないで2030年まで「現状放置」
    • ① 日本の産業が海外のプラットフォーマー(例、アマゾンやグーグル)の下請けになる
      ⇒付加価値が海外に流出
    • ② 新たな付加価値が生みだせない
    • ③ 低付加価値・低成長の産業へ労働力が集中
      ⇒低賃金労働者が増加
  • (2)働き方改革は、この現状を打破することを考えなければならない。
    • ① 社会課題を解決する新たなサービスの提供
      ⇒新しいビジネスモデル
    • ② 技術革新を活かしたサービスの発展による生産性の向上と労働者参加率の増加
      ⇒技術革新のビジネスモデルへの応用
    • ③ 機会とソフトウエアの共存、人しかできない職業に労働力を移動させ、広く高所得を享受する社会
      ⇒AIへの対応⇔企画力・コミュニケ―新能力

3.AIって何をするの

  • (1)二つのAI
    情報処理としてのAI:大量の情報を処理することでどれだけの仕事が代替できるか。
  • (2)ネットワークのつなぎ目としてのAI:労働者間、企業内の部門間、企業間の連携や情報交換
    ⇒どのように働き方や雇用のあり方を変えていくか

 AIで仕事を奪われるのではなく、AIの活用で重要なのは「つなぐ」こと。
 大半の職業は自動化可能性が50%に過ぎず、人間が担う仕事が失われる可能性は低い。

4.技術革新は賃金格差をもたらす

  • (1)教育レベルが低い労働者の仕事が技術革新により代替え
  • (2)高スキルと低スキルに労働の需要が二分化
  • (3)労働条件の格差が拡大

5.アメリカが発見した日本的経営の強さ

  • (1)産業政策:アメリカに比べて中央政府が主導的な役割
  • (2)社会保障制度:企業と国民「中程度」の負担かつ保障
  • (3)企業競争力:従業員の経営に対する協力を支える長時間にわたる雇用保障や職業訓練と能力の向上に応じて上昇する賃金制度

6.日本的経営の強さとは

  • (1)ネットワーク(組織効率を意識する)
    「知識・技能」「適応力」「動機付け」⇒ネットワークでつなぐ
    企業間・企業内ネットワークにおける組織効率の最大化にする競争力
  • (2)プラットフォームビジネス
    日本企業による企業内・企業間ネットワーク
    ⇒できあがった成果は部品の製造工程に(下請企業、物流企業、販売会社)
    ⇒顧客、研究機関へフィードバック

7.社会として何が大事か

  • (1)社会的合意としての生産性運動三原則の再評価
    • ① 雇用の維持・拡大
    • ② 労使の協力と協議
    • ③ 成果の公正分配
      労働組合があったからこそ、生産性向上の諸成果は、経営者、労働者および消費者に国民経済の実情に応じて構成に分配できた。

講座一覧に戻る