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2018年度 大阪市立大学・連合大阪寄付講座

<第8回>
ケーススタディ①

中小企業問題の本質は何か

講義のねらい

「働くこととは」、「労働組合、労働運動とは」、「労働者の権利とは」、「働くことをめぐる諸課題」等などについて考え、理解するとともに、そうした上で働き、社会活動を行っていく人材を育成することを目的とする。

講義内容要約

<第8回>ケーススタディ① 中小企業問題の本質は何か
日時 2018年11月26日(月)13:00〜14:30
場所 大阪市立大学
講師 狩谷 道生
(JAMオルガナイザー育成推進室長・教育全国オルグ(JAM大阪特別執行委員))
趣旨 日本の企業の99%は中小企業である。中小企業の街、大阪において多くの中小製造業の労働組合が結集する「JAM大阪」はどのように労働条件向上に取り組んでいるかを紹介しつつ、大手と中小の格差問題の本質は何かをともに考える。
テーマ 中小企業問題の本質とは―JAMの取組から
内容

1.産業別労働組合JAMについて

  • (1)機械金属産業で働く労働者の組織
  • (2)中小企業で組織された労働組合が多数を占め、その多くは機械金属関連の「下請企業」が多い。

2.日本の中小企業の現状と問題点

  • (1)中小企業の現状
    • ① 企 業 数:約380.9万社(日本企業【389.1万社】の99.7%)
    • ② 従業員数:約3,361万人(雇用労働者【4,794人】の70.11%)
    • ③ 付加価値額:約57.0兆円(総額108.0兆円の53.0%)
    • つまり、中小企業は「小さな巨人」。例:下町ロケット
  • (2)中小企業が抱える諸問題
    • ① 収奪問題:中小企業の生産した価値が取引上の優先的地位により、購入価格の切り上げ、販売価格切り下げ、代金支払い引き延ばし、納入後の値引き要求等により、寡占大企業に吸収される。
    • ② 経営資源問題:中小企業が大企業に資金、労働力等の経営資源を優先吸収されるため、経営活動を制約され、価値生産が抑制される。
    • ③ 市場問題:寡占大企業の行動により中小企業の市場が圧迫され、商品価値の実現が困難になる。
    • *寡占:限られた少数の大企業が市場を支配しながら,相互に競争している市場構造。
  • (3)不公正取引問題
    • ① 不合理で従属的な契約関係「曖昧な発注、無限の要求」
      基本的な契約があっても、価格・品質・納期の取り決めはない。
    • ② 中小企業が直面している問題
      • (ア)直近の利益圧迫要因:円安による原材料仕入れ価格の高騰・消費税増税
      • (イ)取引において直面している課題:仕入単価上昇によるコストアップ・単価下落や引き下げ要請・取引先からの受注減や取引打ち切り等

3.中小企業で働く労働者の現状

  • (1)拡大する労働条件の格差(賃金)
  • (2)不安定な経営基盤と多発する倒産・「合理化」問題
  • (3)低い労働組合組織率
  • 労働組合の存在意義が薄れる。経営者に対してものが言えなくなる。
  • 特に中小企業の労働組合組織率が低い。企業規模が小さいほど低い。

4.産業別労働組合JAMの活動

  • (1)中小企業労働者の労働条件引き上げと大手企業格差縮小を目指す
  • (2)最低賃金闘争による賃金の引上げ
  • (3)一時金、労働時間等、賃金以外の労働条件の引上げ
  • (4)中小企業労働者の雇用・職場を護る
  • (5)中小企業労働者尚組織化

5.「価値を認め合う社会」へ ―「ものづくり基盤」の強化と「公正取引」の実現のために

  • (1)「ものづくり基盤」の強化
  • (2)「公正取引」の実現
  • (3)価値を認め合う社会へ

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