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コラム「徒然なるままに」(2007年6月)

地域の絆をつくる努力を!

連合大阪 事務局長 脇本ちよみ

 3月25日に起きた、石川県の「能登半島大地震」から2カ月がたった。

 私は福井県の出身なので、お隣の県で起きたこの地震はなぜか人ごとではない。この地方は、有名な輪島塗の産地であり、塗り物に大切な湿気のない、気温差の少ない「蔵」は、重要な保存先である。しかしそれらの貴重な「蔵」もこの地震でほとんど倒壊してしまったらしい。

花のイラスト 私の友人の1人がこの能登の出身で、もうすでにご両親も大阪に出てきておられ今は空き家になっている生家が、この地震で被害にあった。彼女が3月末に帰ってみると、生家はまだ原型はとどめているものの、あちこち補修が必要だったし、いろんなものがおいてあった「蔵」は土壁が崩れ、傾き、危険なので結局取り壊しすることになったらしい。「蔵」を取り壊すにあたり、揺れの激しさを物語る、ぐちゃぐちゃになった「蔵」の中から、昔からの「茶碗」や「御椀」、九谷焼の品物や輪島塗のお膳(ぜん)など、彼女はいくつかの思い出の品々を持ち出し、あとは「仕方がないので物をおいたまま『蔵』を取り壊した」と寂しげに語っていた。

 彼女と話していると、家や「蔵」の倒壊など、被害はかなりのものであることが実感できる。

 思わず私は「そんなにひどい揺れで、そんなに被害が大きいのに、亡くなった人とかが少なくすんで不幸中の幸いだったね」というと、彼女は「それは地域のネットワークのおかげだとつくづく思うよ」と言った。つまり、地震後、生き埋めにならなかった人たちは、「あそこの家は1人暮らしのおばあちゃんがいる」「ここの家にはご夫婦がいるはず」「○○の△△さんは大丈夫か?」「○○さんがいない、探して!」という具合に村中の家を安否確認にかけ回り、崩れた家や土壁に生き埋めになっている人たちを助け出し、避難所まで運び、村中の安否の確認ができるまで走り回ったということである。もちろん火災が起きないですんだ時間帯であったことも被害が少なかった理由であろうが、日ごろから村としての付き合いの濃さ、ネットワークの強さ、お互いのことを良く知っている絆…などが人的被害をこれだけにとどめた大きな理由であったようだ。

 「これが、大阪で起きたらどうだろうか?」とつい考えてしまう。多くが「隣は何をする人ぞ?」という関係の中で、誰が、どこに埋まってしまったかさえ分からないことが起きるのではと考えるとちょっと恐ろしくなる。先日の特急電車内での強姦(ごうかん)事件の報道にも胸が痛んだが、災害や凶悪犯罪が多発する昨今、“周りに関心を持ち、お互いに連携して解決にむけて取り組める行動をどう起こせるか?”は市民としても、地域としても大きな課題だと思う。

 30数年前、私が子育て中のころ、ある意味、親切でおせっかいな近所のおばさんたちにいろんなことで助けてもらい仕事を続けてこられたと思う。私自身、年齢的にも地域での暮らしが長くなるこれからは、“どうやって地域のネットワークを作り、絆を深めていくか”を真剣に考え、私にできる小さいことから行動に移していきたいと思っている。