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内向き指向から脱し、安心社会の実現を

2012年10月26日(於:第22回連合大阪地方委員会)

連合大阪 会長 川口 清一

連合大阪 会長 川口 清一

 連合大阪地方委員会にご参加の皆さん、ご苦労さまです。

 本日、この1年間の活動を振り返り、後半の1年間、どのような課題に対応していくかを、お計りする場であります。開催にあたり、何点かについて所信を申し上げたいと思います。

 まずは、東日本大震災からの復興・再生について、大震災から1年半余りが経過した、今日もなお、30万人を超える人たちが仮住まいを強いられているということをお聞きいたしております。こうした現状を見るとき、復興への道半ばといわざるを得ません。

 総額19兆円の復旧・復興予算、その使途を巡って疑問の声など様々な議論がありますが、被災地と被災者の生活の安定、安心、持続的な雇用の確保につながる復興・再生に全力を傾注するべきと考えます。

 また、私たちは、この震災を風化させてはなりません。震災から得た教訓は、しっかりと安心・安全の社会構築に活かしていかねばなりません。被災地への支援についても、出来得る支援は継続できるよう皆様方にも、ご協力をお願いしておきたい。

 次に大阪における政治や雇用・労働にかかる課題についていであります。

 昨年の連合大阪定期大会において、大阪の民主主義を守る闘いと位置付けて、府知事・大阪市長選を闘うと申し上げました。結果は、大阪維新の会代表個人の圧倒的な人気と、大阪に漂う閉塞感打破への期待感の前に敗れる結果となりました。共に闘っていただいた構成組織の役員や組合員の皆さん、地域・地区役員の皆さんに、心からお礼を申し上げたいと思います。

 さて、皆さん、橋下大阪府知事が誕生してから5年、その間、大阪維新の会が府議会で過半数の議席を占め、大阪市・堺市議会において第一会派の位置を確保し、大阪府知事・大阪市長も維新の会、幹事長と代表が首長になって、果たして、大阪の閉塞感は打破されたのでしょうか。社会の不安解消のために誰かを悪者に作り上げて、これを徹底的にたたくことで解消しようとする政治の手法は、極めて疑問であり、変革を叫ぶだけでなく、何をしてきたのかが、極めて重要であり中身や実績が希薄であれば、ただの鬱憤晴らしの政治であり、そうした手法がまかり通る社会であってはならないと思うのであります。

 特に、求めておきたいのは、厳しい財政状況の中では、成すべき政策の選択が必然的に求められてくることは否定をいたしませんが、「(1)政策選択にあたっては、明確な将来ビジョンに基づいた行政全体の最適化が図れているか、(2)行政のチェック機能を担う議会の健全化に努力されているか、(3)合意形成のプロセスが大切にされているか」など、常に問い続けられるべきでないかということであります。

 大阪の雇用・労働環境は、直近の失業率や有効求人倍率は多少の改善がみられるものの、依然として厳しい状況から脱し切れていません。

 この1年間、大阪府域に転入した企業は163社、転出した企業は259社で、この転出超過は10年連続しています。そして、この10年間、企業の売り上げ高、約11兆円が転出している現状にあります。私たちは、まず、こうした状況を改善努力していくことが、政治や行政の役割であり、経済界とも連携をして、地域の雇用の数を増やすこと、そして、働く人の総所得を増加させる、とくに、非正規で働く人たちの所得を拡大していくことで、良質な雇用の再生に取り組まなければなりません。

 持続的社会の維持発展のための若年者就労支援や、大阪・関西の経済発展・活性化につなげる経済特区構想など取り組むべき課題は多くあります。まずは、こうした行政課題に知事や大阪市長は首長としての責任を果たすべきであります。しかし、一方で政党の代表・幹事長という立場で国政進出を目指していますが、地方首長との兼務は無謀であり、無責任な行動ではないかと言わざるを得ません。大阪府民や市民が選挙で託したのは、地方行政の長としての執行に全力を傾注することであります。選挙で託された府民や市民の期待に応えることが、その責任を果たすことであることを申し上げておきたいと思います。

 次に、政治についてであります。

 「決められない政治」が続いている現状を憂いているのは、私のみではないと思います。まずは、国民生活に大きな影響を及ぼす特例公債法案や、違憲状態と言われる一票の格差問題、さらには社会保障制度の改革につなげる国民会議の設置など、当面の政策課題を前に進めるため、与野党を超えて政治の責任を果たすべきであり、政局にこだわり続けて政治を停滞させるべきではない。政治が動けば“近いうち”は自ずと見えてくるのではないでしょうか。

 政権交代から3年有余が経過しました。政権交代に大いなる期待を抱いた分、失望感が大きかったことは事実であります。また、「社会保障と税の一体改革法案」を通じて生じた与党の分裂も、民主党の信頼を大きく損なうこととなり、支援をしてきた私どもにとっては、極めて遺憾であると申し上げねばなりません。このことによって、政府・与党としての政策実現力を大きく削ぐことになったのは事実であります。しかし、労働関連法を始め、政権交代によって着実に前進してきた政策も多くありますが、民主党として、この3年間、何が実現でき、何が不足しているのか総括をしていかねばなりません。また、与党としての責任に背を向け、勢いのあるグループに擦り寄ろうとする議員の行動は、決して国民の信頼を得られないということを申し上げておきたいと思います。

 さて今、日本社会全体が内向き指向になっていると言われています。そして、政治の分野においても、内向き論議になっていないか危惧するものであります。エネルギー政策をはじめ重要課題の決定プロセスにおいて希望的な観測や情緒的な議論ではなく、世界の中で何が起こっているのか、そのことが日本の社会経済にどの様な影響を及ぼすのか。その上での国家戦略は“いかにあるべきか”ということを私ども労働組合の立場からも考えていかねばなりません。

 今、政治に必要なことは、スローガンや理想論を語るだけのリーダーでなく、国の歴史と未来にしっかりと責任を持つことの出来るリーダーや政治でなくてはなりません。

 既成政党を批判し、歯切れの良い政策で人気を得ようとする政党や政治集団に与することはできないということを明確に申し上げておきたい。

 その上で、次期国政選挙においては、労働政策の前進が図れたこと今後も労働政策の理念について共有できることから民主党を主軸として支援してまいりますが、連合本部の「基本方針」に基づき、議員個々の活動状況など検証を加えた上で、必要な手続きをとってまいりたい。なお、来夏の参議員選に比例区から立候補予定の組織内候補者9名を含めた全ての推薦候補者を国政に送り出すため、組織の総力を結集していこうではありませんか。

 最後に、労働運動課題について、

 私たちは働くことで社会に参加し、貢献する喜びを感じながら、働くことが報われる社会、働くことで税を納め、お客様、消費者としてサービスや商品を買い、そして商業や産業の拡大・再生産につなげることによって持続的な社会を作っていく。そのためには、雇用の場を守り創っていく、そして雇用の質を高めていくことこそが最も重視されるべきではないかと考えている。

 しかし、私たちを取り巻く環境を見るとき、非正規労働者は全雇用労働者の35%を占め、年収200万円以下で働く者は1,100万人を超え、生活保護受給者は、212万人に達するなど、社会の持続可能性が脅かされています。

 安心社会の構築のために、最低賃金の引き上げ、パート・非正規労働者の公正な均等待遇、就労支援、子育て支援など労働政策の充実に取り組むとともに、集団的労使関係の輪を広げていくことによって労働諸条件の向上・改善させていかねばなりません。労働組合の組織率は年々低下しています。連合は「1000万連合」を目指す取り組みを開始いたしました。

 私ども連合大阪も、この大阪の地で労働組合というセーフティーネットをいかに広げていくかという運動をスタートさせていきたいと思います。

 今年は、「国際協同組合年」と定められていますが、これを契機に仲間同志の助け合い、連帯という原点に立ち戻り、非正規労働者や失業者など、共助を必要とする人たちが、共助の枠組みに参加できるようにするためには、どうすればいいのか。労働運動の社会化や組織拡大に繋げていくためにも、労働運動を基盤とする協同組合組織である労金・全労済とも連携した取り組みを求めていかねばならないと考えています。

 私たちが目指す「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、共に頑張ることをお願い申し上げ、挨拶とします。