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コラム「あんな相談こんな事例」(4) 2006年1月

あなたの職場では、
会社も自分自身も労働時間を記録していますか?

連合大阪なんでも相談センター 相談員 飯塚 健二

☆ ☆ ☆

 連合大阪では、2005年11月17日〜19日の間「不払い残業撲滅特別電話相談」を実施した。これは全国一斉で行い、連合大阪には21件(全国159件)の相談が寄せられた。ここでは主な相談内容を紹介する。

★相談時のアドバイス

家族からは、

*夫の勤務する会社は、月40時間しか残業がつかない。1カ月間に27日の出勤や、160時間もの残業をしたこともある。残業代未払いで請求はできないか?

*夫はビル管理の仕事をしている。仮眠中は無給であるにもかかわらず、起こされて仕事をすることもある。直属の上司は時間外労働と認識しているが、本社へ報告する際は部長がいつの間にか残業報告書を改ざんし、無給としている。何とかならないか?

*週46時間働いているが、残業手当がつかない。タイムカードはない。

*塾の講師をしている。週60時間程度勤務し、年2回の休日の行事にも出席しているが、休日手当は一切なし。

*パートとして、スーパーでの販売員をしている。残業代の計算は15分単位となっている。だが、副店長は始業10分前から、終業後10分まで勤務せよという。この分の残業代は切り捨てられるのか?

などの相談が寄せられている。

 このような家族からの相談にはアドバイスもするが、詳細を認識して的確に答えるためにも、本人から直接「連合大阪なんでも相談センター」に相談してほしいと話すようにしている。また「長時間労働をしているので、夫の健康が心配だ」と妻からの相談もある。その際は、帰宅時間をメモすることを勧めている。なぜなら、過労死の裁判で夫の帰宅時間を妻がカレンダーに記入していたことにより、重要な証拠となり、勝訴となった実例があるからだ。

 また本人からの相談時には、事実関係の証拠をもって労働基準監督署(以下、労基署)に行き、匿名で申告できることや、さらに組合を作って会社と交渉できることもアドバイスする(労基署が行う不払い残業企業への摘発は、その60%近くが労基署への投書、申告によるものといわれている)。

 昨年6月中旬に、若者3人が相談にきた。3人の仕事内容は食品の自動販売機に品物を補充し、売上金の回収をしていた。勤務は夜10時から翌朝7時まで。不払い残業もあった。しかし3月末に一方的に辞めさせられて、会社のやり方が許せないからと連合大阪に相談。1人でも入れる労働組合に加入してもらい、会社にタイムカードの提出と、2年分の未払いの精算を要求して、数回交渉を行った。結果、8か月分の平均残業手当の2年分(1人平均53万円)を支払うことで解決した。

★1分間でも残業となるか?

 この交渉で会社側の社会保険労務士から「1分間でも残業として扱うのか?」と聞いてきたこともあった。以前、マクドナルドで働くアルバイトの賃金や社員の時間外手当の計算が、30分単位で算定されていた(30分未満は切り下げ)。しかし、2005年8月にこのことを労基署より法違反として指導された。
 現在では労働時間(1時間未満の端数)の取り扱いは基本的に1分単位ですることになっている。

★厚労省の通達

 しかし厚生労働省の通達(S63.3.14基発第150号)では、以下のケースはOKとなっている。

(1)1カ月における時間外労働、休日労動および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。

(2)1時間あたりの賃金額および割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。

(3)1カ月における時間外労働、休日労働、深夜業のおのおのの総額に1円未満の端数が生じた場合、(2)と同様に処理すること。

★キチンと記録を

 時間給で働いている人たちにとっては、時間計算は大きな問題である。
 パートの方の相談で、切り捨てられた労働時間を1年間で通算すると、大きな不払い残業になる。「低い賃金で精一杯がんばっているのにどうして?」と言いたくなるのは当たり前。企業はもちろん、労働者一人ひとりが「あなたの職場ではどうですか?」と聞かれて、キチンとしていますと答えられるようにしなければならない。