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コラム「あんな相談こんな事例」(6) 2012年2月

パーソナルサポートで自立支援を

連合大阪 非正規労働センター 相談員 坂本眞一

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 大阪府下には多くの相談機関が存在し、労働相談も行政、労組、NPOなど多数あります。それらの相談機関にはさまざまな相談が寄せられますが、どの相談機関にも「常連客(リピーター)」がいるもので、当然、連合大阪非正規労働センターもさまざまなリピーターが存在します。

イメージ 「政治状況の解説・要望をする人」「うつ病で悩みとも報告とも言えない相談をする人」などさまざまですが、その中に「生活保護受給者(と思われる)人」が度々「個人の状況報告のような電話相談」をしてきます。数年間働いた形跡がないのですが、ハローワークへは足しげく通っているようであり、いくつかの会社面接を受けているようです。「Kですが、面接に行くにはやっぱり背広が要りますよねー」「面接に行くのは自転車で行ったらまずいですか?」「ハローワークはどこに行ってもいいんですかねー」など相談というより、「友人との会話」のように電話をかけてきます。うつ病などのリピーターは苦慮する場合が多いのですが、K君は「おおらかな相談」であり、相談を受ける側も「一息つける相談」です。しかしK君の実態は「一息ついて」いられません、放置できないものがあります。

 近年「就職できない若者」が増えている事はマスコミも盛んに報道しており、周知の事実ですが、その有効な対策は進んでいません。「長い間働いていないもの」「働いた経験がないもの」の自立には、「仕事を見つける」だけでなく「仕事を続ける生活スタイルの確立」「モチベーションの維持」「健康問題」など多くの課題が山積しており、そのサポートにはトータルサポートが必要となるケースが多いことはさまざまな支援団体から語られています。しかし現状の行政を中心とした支援サポート体制は改善されつつありますが、未だ「縦割り支援」が中心であり、個々の自立に向けての「連携支援」は十分に進んでいるとはいえません。

 そのような中、湯浅誠さんなどが中心となり内閣府に「パーソナルサポートサービス事業検討会」が立ち上がり、モデル事業が行われ、昨年末には事業が拡大されました。そして事業拡大により大阪からは2つの事業がエントリー(「大阪府・大阪北部」及び「大阪市」)し、新年度から実施される方向にあります。この事業の特徴は自立に向けて個々人に見合ったさまざまな施策を横断的に活用しようとするものであり、従来の行政支援のあり方を変えるものです。

 少し言い過ぎになるかもしれませんが、ようやく「足に靴を合わせる(靴に足を合わせるのでない)」制度になるように思います。連合も支援し、その行く末に期待しています。連合大阪は一昨年から大阪希望館を支援してきましたが、大阪希望館の取り組みは「パーソナルサポートそのもの」であり、新たに実施される大阪府下2箇所のパーソナル事業を注目しています。相談員としても具体の相談が「生活を含めた労働相談」も多くある中で、この事業がさまざまな機関と連携し有効な施策となるよう期待したいと思います。

 冒頭のK君から電話があり「3ヶ月のアルバイトが決まった」とのこと。この制度を活用することなく、自立への道を歩む事を願っています。

(執筆:2011年2月)

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