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2008年11月5日更新

今が“旬” 『新運転 関西職別労供労働組合』

労働組合が運営する労働者供給・派遣事業とは

■新運転の創設

 新運転は労働者供給事業(以下、労供事業)を行う労働組合である。職安法は44条で労供事業を禁止する一方、唯一、労働組合に許される事業だ。なぜなら労働組合は民主的に運営される、差別の無い公平な取り扱いを行う、中間搾取をしない非営利団体だからだ。

 新運転、関西職別労供労働組合は昭和39(1964)年、関西の地に新産別運転者労働組合の大阪支部として産声を上げ、来年45年の節目を迎える。

 労供事業とは個人の意志で組合に加入した組合員を、技能と適性の判断の下に事業所(企業)と労働協約で定めた賃金、労働条件を承諾し就労する。原則、日々雇用され不特定多数の協約先に組合の指示に従って就労し収入を得る。労働・社会保険はそれぞれ被保険者手帳を所持し就業先事業所で印紙を貼付され適用資格、すなわち法の下での権利を有するものだ。

■99年職安法改正を契機に新会社の設立へ

 さて派遣法は、1985年に成立し、99年12月の改正で派遣対象26業務をネガティブリスト化し原則自由化した。時の小泉首相の規制緩和の名の下、あらゆる職種に派遣労働者があふれ、経営側はこれを利して人件費抑制、利益優先主義を謳歌するという、いびつな展開を進めた。さらに経営者団体の圧力で03年には製造業への派遣参入をも認めさせた結果、派遣会社は約62,000社と増加し、企業間競争で労働者の人権軽視は目に余るものとなった。

 一方、われわれが行う労供事業は彼ら派遣業者の労働市場乱入により大打撃を受けるに至った。労供事業の法整備を放置したまま労働市場に派遣と対置されたことで、使用者側にとっては派遣の利便性(非直接雇用)に依存することとなり、次第に就労先確保は困難な状況となった。

 労供事業が職安と一体となり需給調整機能を推進する中で常に問題であったのは、労供組合の「事業主性」であったが、99年の職安法の改正で労供組合が派遣とセットにすることによって事業主性を擬制的に適用できるようになり、供給・派遣における第1号の事業体として東京ユニオン、コンピューターユニオンが存在する。

 前述のように労供事業を行う組合は在籍組合員の就労先確保を目的に、また協約先事業所が供給組合から派遣会社へ移行することに対応するため、新運転東京地本が(有)タブレットを設立し派遣事業を展開した。

 関西地本も派遣会社の乱立で低賃金、社会保障の未権利状態、劣悪な労働条件で働く労働者の組織化を視野に派遣事業への参入を04年の組合大会において決議し、その後、大阪労働局に対し日雇い雇用保険印紙の適用を巡って事前交渉を行ったが、関西で前例無きことから回答は不満足な結果だった。連合大阪の仲介を頼み再度折衝の場を得て、ようやく労供事業を行う組合が設立する派遣業への申請の扉を開くことができた。

 その間、事業資金確保のため、緊縮財政を実施しながらの組合活動であったが、本年5月に会社を設立し法人登記、6月に一般派遣業の許可申請を経て9月1日付けで許可された。現在、供給組合に在籍する組合員の派遣事業展開で不可欠な日雇い雇用保険印紙適用事業所の認可を得るべく、職安行政と交渉中である。

 この派遣会社はわれわれ新運転の労働組合運動の一環であり、その具現化にほかならない。なぜならば全額を組合で出資し立ち上げた(株)ニューロードは全国で3番目に設立された労供組合が事業主性を持ち運営する会社であり、言うまでもないが利益を必要としない。担当役員は組合専従者で構成され無報酬で従事する。従って派遣料金の内一定の経費を除き最高限度の労働者への分配が約束されている。通常、派遣料金の40%が会社側の利益とするようだが、われわれが目指す供給・派遣会社は公租公課、最低限の会社維持コストなどの情報開示は組合規程に明記するなど労働組合性を担保している。このため、民間の派遣会社での労働賃金よりも高賃金が確保される。

■日雇い派遣を禁止するだけでいいのか

 現在、派遣法改正への動きが加速し日雇い派遣を禁止する方向で論議されているが、コンプライアンス軽視の社会風潮や過去の歴史が証明するように、闇派遣業者や偽装請負業者が跋扈するのは間違いなく、戦前戦後のボス支配による劣悪な環境下での労働者が出現すると予測される。小林多喜二氏の「蟹工船」が見直されているのは、その証左であろう。あらためて労働組合が行う供給・派遣事業の必要性を訴えたい。

 前述のように現在、対行政交渉は続いており、一山越えてまた山がそびえ立つような状況であるが、困難克服の先は非正規労働者の組織化であり、賃金改定、労働条件の向上、社会保障の獲得など、労働組合の社会的使命として必ずや乗り越えて行く気概で取り組んでいる。


■新運転 関西職別労供労組
■〒536−0016 大阪市城東区蒲生1−8−11
■TEL06−6931−5251 FAX06−6931−5257
■執行委員長 隅谷 登 副執行委員長 林 克己、井口隆志 書記長 白土武裕