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コラム「あんな相談こんな事例」(7) 2012年3月

外国人労働者をめぐる課題

連合大阪 ハートフルユニオン 書記長 酒井恭輔

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 3月11日に東北を中心に襲った地震と津波により、多くの被災者が出ている。私たちには95年の経験を活かした支援ができるが、被災外国人に対する援助もこのひとつである。

 当時は英語中心で避難情報などが発信されていたが、南米や中国、東南アジア出身者にとって英語は日本語以外の外国語のひとつにすぎない。彼らに十分な情報が伝わっていなかったという事実は、わが国が世界中から外国人を生活者として受け入れているということの証拠であった。今回の震災においては、すでに多方面から各国語による情報提供がなされており、多くの外国人の助けになっていることは間違いない。

イメージ 連合大阪は外国人労働者の多様性にいち早く気がついた珍しいローカルセンターである。毎年3月末に開催している「外国人労働者なんでも電話相談」は今年で14年目になる。外国人支援NGO、「すべての外国人労働者とその家族の権利ネットワーク関西(RINK)」の協力のもと、不法滞在者や亡命希望者なども拒まずに9ヵ国語であらゆる相談に対応している。9ヵ国語で書かれたチラシを見て、これは何語、こっちは何語・・・、と全部分かる人は言語マニアくらいだと思うが、連合大阪ホームページに載っているので関心のある方は一度ごらんいただきたい。

 さて、今年は2日間で30件程度の相談件数であったが、震災関連の労働相談もあった。「地震で明日から休み。給料もなし」などと使用者から言われたという。同じような処遇を受けた隣の工場の友人は休業手当なるものをもらっているのに、なぜ自分には支払われないのか?と電話をしてきたのである。また、今回は年金についての相談が多かった。中には本国に帰国後も継続して加入するにはどうすればよいのか、というものもあった。このような相談内容から、移住者として日本で暮らす外国人が増えてきたのではないかと推測することができる。つまり、前者については日本の法律や制度について多少なりとも同朋が情報提供をしていること、後者については青年期に来日した者が壮年を迎えて老後のことを考えるまで十分な時間を日本で過ごしてきたということを示しているのである。

次に、労働組合としては相談者と一緒に問題を解決していくことが肝要である。外国人労働者の受け皿として、従前からあった一人でも加入できる労働組合、「連合大阪ハートフルユニオン」を外国人向け労働組合として活用し、10年ほど活動を続けている。

 外国人労働者には、外国人ゆえに出入国管理法上で定められた在留資格というものがあり、誰もが自由に滞在し、好きな活動ができるわけではない。在留資格によっては、職業を自由に選ぶこともできなければ転職をすることもできないため、この点に目を付けて外国人従業員に不当な扱いをする使用者も出てくる。

 現在取り組んでいるケースも、「給料を法律どおり支払うくらいなら罰金を払うほうがマシ」と実際に検察に送検されてしまった事業主が相手である。未払いといっても残業代ではない。時給が300円なのでせめて最低賃金で払ってほしいというこの上なく穏当な要求である。

 たいていの事案はこんなもので、この程度の要求と、国に残した家族と、来日のためにこしらえた多額の借金と、日本に居続けることができるかどうかをそれぞれ天秤にかけながら、ぐらぐらふらふらと闘っている。

(執筆:2011年4月)