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「実感なき景気回復」の轍を踏むな

2013年1月9日(於:第15回三役会)

連合大阪 会長 川口 清一

 新年明けましておめでとうございます。新しい政権になり、年末から年始にかけて株が上がり円安になって経済環境に対する楽観ムードがありますが、本質的な日本の6重苦とも7重苦ともいわれる克服すべき課題は残っていることから、楽観できる情勢ではないのではと思っています。

 とりわけ、新政権は補正予算を中心に20兆円にも及ぶ予算を組もうとされていますし、機動的な金融政策などによって、経済危機・デフレ経済からの脱却を図ろうとされています。こうしたことは、将来への借金が増えるわけですし、財政規律が緩んでしまうと逆のリスクも生まれるということを踏まえた対応がなされるべきではないかと思います。

 かつて、実感なき景気回復ということで、経済指標がトータルとして好調を維持した時期がありましたが、これは一部の企業の内部収益増であり、投資家を中心とする富の集中でありました。その中で、私たち労働者に、日本経済全体の利益の分配がなされなかったということを思い出さなければなりません。今回も、政策展開を誤ればこの轍をもう一度踏むことになりかねない懸念材料もあることを踏まえるべきです。

 こうした状況で迎える2013年の春闘においては、一部には賃上げをしなければならないという経営者もおられるようですが、全体としては、労働者に分配するという状況に至っていないというのが実情ではないかと思っています。その意味では厳しい交渉環境のなかで1%という要求原案を踏まえた交渉を進めなければならないと思っています。しかし、連合は労働組合ですから、自らの主張をしっかりと経営側に問題提起をすることは当然ですが、交渉は相手が有るわけで、経営側が分配に臨めるような経済環境・政策環境であるかということも、交渉当事者として認識しながら、経営側も一緒に土俵に上れるような政策提言をしていかなければならないと思っています。連合の中で賛否両論ありますが、エネルギー政策について連合PTの報告の中で明記して訳ですから、全国の各地域のエネルギーコストの問題が人件費とどのように係わるのかという重要な問題でもあるので、安全を第一義においた上で、一方の交渉当事者として土俵に上って分配の議論ができるような交渉環境を作っていかなければならないのではないか。

 もう1点は、夏の参議院選挙に向けて、自民党の圧勝を回避するために野党共闘を仕掛けなければならないということで議論がなされています。私はまず、衆議院選挙で惨敗した結果をしっかりと踏まえて、民主党が再生するために、新たな党として民主党らしさをどのように出していくかということが優先ではないかと考える。その上で、国民の信を問うために、民主党の存在感を示していかないと、目先のことで右往左往することはいかがなものかと思います。民主党としては議席をいくつとるかということだと思いますが、私はこうした点も含めて民主党に問題提起をしていくべきではないかと思っています。というのも、9産別が候補者を擁立して参議院選挙を闘うわけで、政党として信頼に足りうるかどうか、職場の組合員に対しても、組合員と単組との信頼関係・責任関係をしっかりと果たせるような環境の中で選挙ができるかどうかというのは、労働組合にとって重要な選択要素です。民主党が政党らしさをしっかりと打ち出してもらうところに、再生の力点をおいていただきたいことを申し上げてあいさつとします。